2015年9月17日木曜日

ここにあるすべてのもの

ここにあるすべてのもの

押し黙ったままの錆びた灰皿 
テーブルのガラスに
息子が幼いころに塗った
無邪気な藍色のらくがきのクレヨン

僕の手に結ばれた 
異国の貧しい少女が編んでくれた
呉れない色の心細いミサンガ

たくさんの笑顔や怒りややるせなさなど
瞬時につなげる
黒く艶めく携帯電話

何千回も頭を撫でられ
はげ上がってしまいそうな
フランス製の緑いろのライター

べっとりと
白いお皿にしがみついて
こびり付いた醤油まみれのミョウガ

ここにあるすべてのもの

目に映るパソコン画面の向こうの人の顔
あそこで話していた昔あった人の声
あの人がムスッとしていた時の空気

鼻水や汚れた手をそっと包んだ
ハンカチは汚れて僕の生きた証を帯びて
ズボンのポッケからはみ出して

仕事帰りのすぐそばから
脱いで投げ捨てられる
しみの付いたシャツの洗濯カゴの中の孤独

望むと望まざると
想いが込められるはずだったのに
想いを忘れて来た市民税の封書

あの子と出会って階段で
キスをした時に買った
美しく赤く光った色のイヤフォン

打ち捨てられて床に転げた
僕が着ける訳でもない
使い捨てのコンタクトレンズ

ここにあるすべてのもの

押し黙って 何も言わず
共に居て 邪魔にもならず
弱音も吐かず いばりもせず
なぐさめもせず こびも売らず

ここにあるすべてのもの

愛する気持ち抱きしめて
愛する人も抱きしめて
愛するすべてを愛して止まず
愛する気持ち留めず止まず








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