すべてを失った人へ
すべてを失ってしまった人へ
失ったものは返ってこないのに
失ってしまったものは帰ってきた
お父さんはお母さんへ
お母さんはお父さんへ
お姉ちゃんは妹へ
妹はお兄ちゃんへ
弟はやり場がないけれど
姉と妹と兄に挟まれて
居心地が悪そうで、悪くないような
失くしてしまった思い出や傷痕
消えてしまった苦しみや、
打ち消された、括られた「今」
今は「今」から、いま、となり、
居間が新たに彩られ、
そして微笑みが帰ってきて、
もう一度すべてが造られる
すべてを失ってしまった人へ
すべてを失った人へ
どこに行ってしまうのだろうと思っていた想いは、
ここからもう一度、という気持ちに代えて、
描いた絵や、紡いだ詩は、心の中から蘇り、沸き起こり、
そうしてまた、命が紡がれ、
そうしてまた、光と闇が生まれ、
また一つ、深呼吸をして、
共に失い、共に生み出し、
生まれ合い
すべてを失った人へ
すべてを失ってしまった人へ
2016年5月2日月曜日
2016年2月11日木曜日
教える、ということ
教えるは、推し得る
押し割るではなくて
教えるは、時に、芽を摘む
小さなことを言祝ぐ気持ちを
小さなつぶやきを拾うココロを
教え込む、ではなく、見つけ出す
つまづき、は、揺らめき
揺らめきは、ヒラメキ
ヒラメキは、トキメキ
拾うこと 芽を摘むことではなく
気づくこと 共に喜ぶこと
手をたずさえて伝えること
頭の中のことを置いて
押したり引いたり動かし合うこと
伝えるではなく、つぶやくこと
つぶやくのは、ささやき?
ささやきは、揺らめき
揺らめきは、ヒラメキ
ヒラメキは、トキメキ
いつしかときめきを忘れる時がある
ときめきを取り戻したら
きっとそれを
誰かに伝えたくなるでしょう?
誰かに伝えたくて、いてもたっても
いられなくなるでしょう?
そうして教わったり教えたりして
その輪を継ぐのでしょう
2015年12月1日火曜日
空想家族
一人で生きられない
私もあなたも
だから家族になりましょう
家族を作りましょう
ある日、誰かと出会います
誰かとあなたは家族になります
時間がかかるので、しばらく
ゆっくりと時間をかけましょう
家族になったら一人で生きられない
あなたも私も
だから家族を大切にしましょう
都合の悪いことを引き受けましょう
ある日、誰かが病気になります
あなたはその人を看病します
あなたもいつか誰かになるから
静かに愛情を注ぎましょう
めんどくさいことばかりでやってられない
私もあなたも
少し息が詰まったら
言葉がいらない時を過ごすのでしょう
ある日、欲しいものができたりします
家族はあなたを止めたりします
あなたはがっかりするでしょうが
家族はあなたを大切にしているのでしょう
だからなるべく「家族」になりましょう
お互い「家族」でい続けましょう
ある日、戻る場所がわからなくなる時がきます
あなたから家族を求めることがあったりします
さびついた気持ちには勇気もいるでしょう
きっと家族はあなたと同じ気持ちでいるでしょう
家族の始まりも終わりもわからない
私にもあなたにも
けれどあなたと私が終わるときに
家族はそこにあるのでしょう
いつの日も家族は語らないでしょう
家族もあなたも私も家族なのだから
始まりも終わりもないけれど
家族はこうして続いていくのでしょう
私もあなたも
だから家族になりましょう
家族を作りましょう
ある日、誰かと出会います
誰かとあなたは家族になります
時間がかかるので、しばらく
ゆっくりと時間をかけましょう
家族になったら一人で生きられない
あなたも私も
だから家族を大切にしましょう
都合の悪いことを引き受けましょう
ある日、誰かが病気になります
あなたはその人を看病します
あなたもいつか誰かになるから
静かに愛情を注ぎましょう
めんどくさいことばかりでやってられない
私もあなたも
少し息が詰まったら
言葉がいらない時を過ごすのでしょう
ある日、欲しいものができたりします
家族はあなたを止めたりします
あなたはがっかりするでしょうが
家族はあなたを大切にしているのでしょう
誰も「家族」には逆らえない
あなたも私もだからなるべく「家族」になりましょう
お互い「家族」でい続けましょう
ある日、戻る場所がわからなくなる時がきます
あなたから家族を求めることがあったりします
さびついた気持ちには勇気もいるでしょう
きっと家族はあなたと同じ気持ちでいるでしょう
家族の始まりも終わりもわからない
私にもあなたにも
けれどあなたと私が終わるときに
家族はそこにあるのでしょう
いつの日も家族は語らないでしょう
家族もあなたも私も家族なのだから
始まりも終わりもないけれど
家族はこうして続いていくのでしょう
僕はおじさん
妹に子どもが生まれた
母が見に行こうと言うので
僕は車を出した
孫を抱く母はほころび
妹夫婦は照れ笑い
親になった静かな誇り
ばらばらに生きている人を
たしかにつなぐ小さないのち
帰りしな、母と話した
母がうれしそうに話すので
僕までうれしくなった
ばあちゃんになった母はうれしはずかし
おじさんになった僕は苦笑い
歳をとって一人なままの暮らし
一人で生きている僕を
にぎって離さない家族の温もり
母が見に行こうと言うので
僕は車を出した
孫を抱く母はほころび
妹夫婦は照れ笑い
親になった静かな誇り
ばらばらに生きている人を
たしかにつなぐ小さないのち
帰りしな、母と話した
母がうれしそうに話すので
僕までうれしくなった
ばあちゃんになった母はうれしはずかし
おじさんになった僕は苦笑い
歳をとって一人なままの暮らし
一人で生きている僕を
にぎって離さない家族の温もり
「父」という夢想
小さな手 桃色の肌
薄い肌に細い血管が
浮き出て薄く
この子のいのちのたしかさを
小さな心臓から
体のすみずみに運ぶ
この子と山の小川に行って
沢蟹をとったり
蝉の声の残響を
岩肌に耳を当てて
感じたりだとか
そんな楽しいときを
一緒に過ごせるほど
この子が成長するまで
私はこの子と共に
生きていくことが
許されるだろうか
そもそもこの子は
本当に生まれてきて
私に元気な声を
聞かせたりするのだろうか
「母」となるべきものを持たない
そんな私の心持ちは
どんな代わりがあれば
愛情と呼ばれるのだろうか
薄い肌に細い血管が
浮き出て薄く
この子のいのちのたしかさを
小さな心臓から
体のすみずみに運ぶ
この子と山の小川に行って
沢蟹をとったり
蝉の声の残響を
岩肌に耳を当てて
感じたりだとか
そんな楽しいときを
一緒に過ごせるほど
この子が成長するまで
私はこの子と共に
生きていくことが
許されるだろうか
そもそもこの子は
本当に生まれてきて
私に元気な声を
聞かせたりするのだろうか
「母」となるべきものを持たない
そんな私の心持ちは
どんな代わりがあれば
愛情と呼ばれるのだろうか
2015年11月30日月曜日
会いだしもせぬ娘に
夜遅くにストーブがぼぉーっと鈍い音を立てている
私は静かに目を閉じる
娘に「今日のコロッケ、パサパサしてなかったか。」と聞くと
娘は「母さんとくらべないでよ。」と笑う
娘が出かけるときに、「送ろうか。」と言うと
娘は「そこまでだから歩く、いい。」と断る
娘の恋人ができたらしいことを妻から聞き
「会ったのか。」とすましてたずねてみる
妻が「きになるの?」と笑うと
黙って「んんん。」とうそぶく
娘が欲しかった、と思えば、
私がいるじゃないの、と妻が言い
お前はいるけど、お前じゃなくて、と言い返せば
私がいなければ何もできない子供のくせに、と言い返され
ふと、そんなことを、ストーブの赤いチラチラを見ながら
夜遅くに一人で考えたりする
私には娘も妻もいない
会い出しもせぬ娘に会ったとき
私は何を言うのだろう
そんなことをふと考えながら、
また赤いチラチラを見ながらぼんやりとする
ストーブが鈍い、ぼぉーっと言う音を立てている
私をけして、一人にしないように
私をけして、邪魔しないように
私は静かに目を閉じる
娘に「今日のコロッケ、パサパサしてなかったか。」と聞くと
娘は「母さんとくらべないでよ。」と笑う
娘が出かけるときに、「送ろうか。」と言うと
娘は「そこまでだから歩く、いい。」と断る
娘の恋人ができたらしいことを妻から聞き
「会ったのか。」とすましてたずねてみる
妻が「きになるの?」と笑うと
黙って「んんん。」とうそぶく
娘が欲しかった、と思えば、
私がいるじゃないの、と妻が言い
お前はいるけど、お前じゃなくて、と言い返せば
私がいなければ何もできない子供のくせに、と言い返され
ふと、そんなことを、ストーブの赤いチラチラを見ながら
夜遅くに一人で考えたりする
私には娘も妻もいない
会い出しもせぬ娘に会ったとき
私は何を言うのだろう
そんなことをふと考えながら、
また赤いチラチラを見ながらぼんやりとする
ストーブが鈍い、ぼぉーっと言う音を立てている
私をけして、一人にしないように
私をけして、邪魔しないように
2015年11月23日月曜日
おもかげ
雨が振って来た
雨が降って来て
傘を持たず
急に着ていたシャツを頭に掲げて
急ぎもせず
凛と歩く
あの子は今頃何をしているんだろうか、とか
そういえばここをよく通ったっけ、とか
黙々と
目に映るものを
うそともほんとうとも受け止めず
流れて行くものを、ただそのままに
雨とともに身体にしみ込ませ
忍び込んだ怪しげな想いは
いつしか宙へと
浮かんで消えるような
ここにとどまるような
よくわからないもやもやが
頭に掲げた濡れたシャツから
湯気になって出て
ここはもう秋の中心軸から少しずれて
悲しくはないんだけれど
悲しくなくはないような
恋しくはないんだけれど
恋しくなくはないような
よくわからないけれど
雨に濡れて
傘も持たず
そんなことだけを思って
あ、あの子が通った
と、思ったりして
雨が降って来て
傘を持たず
急に着ていたシャツを頭に掲げて
急ぎもせず
凛と歩く
あの子は今頃何をしているんだろうか、とか
そういえばここをよく通ったっけ、とか
黙々と
目に映るものを
うそともほんとうとも受け止めず
流れて行くものを、ただそのままに
雨とともに身体にしみ込ませ
忍び込んだ怪しげな想いは
いつしか宙へと
浮かんで消えるような
ここにとどまるような
よくわからないもやもやが
頭に掲げた濡れたシャツから
湯気になって出て
ここはもう秋の中心軸から少しずれて
悲しくはないんだけれど
悲しくなくはないような
恋しくはないんだけれど
恋しくなくはないような
よくわからないけれど
雨に濡れて
傘も持たず
そんなことだけを思って
あ、あの子が通った
と、思ったりして
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